田中勇さんのストーリー
対立の原因が分かってから、禁煙を応援したいという気持ちになってきました。
人に刃物を向けるって犯罪じゃないですか。でも肺がん患者の前でたばこを吸っても犯罪じゃないんですよね。でも、僕らにとっては犯罪みたいなものなんです。同じなんですよ、ある意味。僕は特に、小細胞肺がんで、たばこが原因なので。目の前で吸われると「うわっ」と絶対思うわけなんです。
そんな中で結心プロジェクトに参加して、禁煙を勧めるということが対立を生む仕組みを知ってから、たばこ吸っている人を許せるようになりました。それまで、「たばこを吸う人近寄らないで!」だったけれど、途中から「依存症なんだ」となりまして。過去の周りの喫煙者が「コミュニケーションツールだから止められない」というのを言い訳だなと思っていたんですが、「依存症」だと思うととてもしっくりきました。
私は岡山でBook Café 栞日のオーナーをしているのですが、それまでは「うちは禁煙ですから」で終わらせていたものを、お客さんにたばこの話をできるようになってきました。「止めようと思っても止められないの?」とか「止めようとしたことがないの?」とか。一歩踏み込むことができたのです。店でお酒を飲むから、喫煙者はたばこを吸いたくなるんですよ。その時は外で吸う。そんな人に、「止めようと思ったことはないの?」って。それ聞くと、「実は禁煙外来行ったんだ」「止めていたんだけどまた吸い始めたんだ」ということが聞けるようになってきたんです。聞けるようになってくると、「この人を応援したい!」っていう気になってきて。不思議ですけどね。その人が止められれば成功体験になるから、他の人にも言える。うちは禁煙のお店だから。単純にやるべきだろうと思いました。
自分たちだからこそ、できることがたくさんあると思うんですよね。肺がん患者だから言えること、肺がん患者だから応援できること、肺がん患者だから一緒にやろうと言えること。僕の知らない人でも、禁煙したいという人を応援したいです。